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熊代亨『「若者」をやめて、「大人」を始める 「成熟困難時代」をどう生きるか? 』

Amazon.co.jp: 「若者」をやめて、「大人」を始める 「成熟困難時代 ...

この本を読もうと思ったきっかけはもう忘れてしまったけど、確か著者で精神科医の熊代亨さんがブログやwebメディアかなんかに書かれてた記事を読んで著者に興味が湧き、この本をAmazonのほしいものリストに入れていたんだったっけか。よく思い出せないがそんな感じだった気がする。元々目にした記事に内容も覚えていないけど、この本の内容のような、若者から大人になるということについて書かれたものだったのかな。自分は、自分自身のことを「いい年して大人になりきれてない奴」のように思っているので、そんな自分へのアドバイスかなんかあるかなと思ってこの本を読んでみようと思ったのだ。

この本では、若者と大人の違い、若者から大人になるというのことはどういうことなのか、といったことが、中年を迎えた著者の経験も交えながら説明されている。

 

「大人」であることの要素の一つとして、「世代や立場が違う人に違いを踏まえて対応できる」ということが挙げられていた。確かに異なる世代とうまくコミュニケーションが取れる人は「大人」だなぁと思える。そうした「大人」な対応ができるには、子供や後輩、高齢者に対して違いを踏まえて対応するといった小さな実践を繰り返すことが必要のようだ。振り返ってみると、自分は後輩などどコミュニケーションをとったりすることをやってこなかった。その辺の経験の無さが、年下世代との付き合いがわからないと思うことにつながっているんだろうな。

 

「大人」になると喜びの感じる部分も変わってくるようだ。自分自身の成長に対してよりも、後輩や子供が変わっていくのを見ると、そこに幸せやモチベーションが生まれる。こんなふうに若者のときとは喜びの基準、価値が変わるのが「大人」のようだ。

 

「大人」は「若者」に比べてアイデンティティが明確になっている。それは自分の仕事や住む場所、趣味、人生の方向性だ。アイデンティティが少ない「若者」はフットワークが軽いという利点もあるが、一方で自分を支えられる芯のようなものがないとも言える。芯が多くあれば自分のある1面を否定されたときでも他の芯に頼ることができるが、芯が少ない場合は自分を全否定されるようなダメージを負ってしまう。この考え方は自分が所属するコミュニティを仕事や学校以外にも持っておくといった考えと似ている。逃げるところがないと追い詰められてしまうから。

アイデンティティで考えると、都会よりも田舎の人々のほうが「大人」になりやすいと言えるようだ。なぜなら、田舎には都会と比べて人生の選択肢が少ない分、人生の方向性も早く決まるから。田舎の不自由さは「大人」となる上では有利な部分でもあるようだ。

 

「大人」になると「若者」のときよりも立場や責任が重荷になるようなイメージがある。しかし、立場や責任が自分を生かしている根拠として感じれるようになり、生きることに意味を与えてくれる。むしろ生きやすくなるとも感じれるようだ。

立場や責任を感じるようになることの一つに、結婚や子育てがあると思う。家族を持つということはとても重大なことで責任は大きいけど、家族を持つことで人生の方向性が固まり、開き直って生きやすくなるんじゃないかと前から考えている。結婚は勢いっていうけど、案外その通りなところもあるかもしれない。

 

結婚相手を探す際には相手の色んなところを見るべきとされていて、その一つにコミュニケーションする上で現れてくる表情や言動といった「ソーシャル・スキル」がある。人の内面はあらゆる行動や習慣に現れてくるものなので、相手のある面を見たときにそれがどういう内面を表しているのかを読み取る力が必要なようだ。相手を見るときにも、「大人」のステージに進んでいるか「若者」にいるかで見方は変わってくる。

 

現代は「大人」になりにくい時代とのこと。なぜなら、昔のような地域社会というものが薄れ、強制的に「大人」にならなくても良くなったし、社会的にも「若者」でいることがもてはやされてきた。さらに、現代では「大人」と「若者」の接点が少なくなり、異なる世代と付き合う機会も減ってしまった。また、結婚や子供をもうけるといった「大人」となる要素も、安定した仕事があり異性に選択されるということもクリアしなければならない。

 

そんな時代だけど、人間にとってエイジングは避けられないし、年下世代から「大人」たり得ているかは常に監視されている。自分自身が年上の世代を見てきたように。

「大人」という要素には異なる世代にうまく対応できるということが1つとしてある。そのためには、実際に異なる世代と接点を持って付き合って行くしかないようだ。異なる世代と付き合うことで、自分とは全く異なる価値観に触れることができたり、自分の経験や知識では見つけられなかった情報、世界を取り入れることができるというメリットもある。そういった情報や知識が人生を少し生きやすくしてくれる。

異なる世代と接する時は、自分の世代の基準で考えるのではなく、相手の事情や立場、歴史なども頭において接することが重要のようだ。そういう考えが持てれば、敬意を持って相手に接するができるようになる。

 

異なる世代と接して知識、情報、価値観を取り入れるっていうのは重要だなと思う。そして自分はそれを今まであんまりやってこなかったんだなと思う。本やインターネットでも情報や知識は得られるけど、やっぱりナマの人間から得られるものって身に付きやすいし、即効性もあるような気がする。コミュニケーション能力高くて色んな人と付き合いがある人はそれだけアドバンテージがあるんだ。当たり前のことなんだけど。やっぱり人って社会的な生き物なんだなと思う。

 

いつまでも「大人」にならない生き方もできるけど、それはそれで良い点も悪い点もある。「大人」になることは良いことばかりじゃないけど、色んな価値観が変わったり、案外生きやすくなったり、思ってるほど窮屈なものじゃないようだ。

社会で生きていくうえで「大人」にならない生き方は色々と不都合なこともあると思っている。なるべくスムーズに「大人」になるべきなのだ。それには異なる世代との付き合いや人生のアイデンティティを持つことが必要で、結婚や子育てといった人生における重大なイベントによるところが大きい。

何かしら人生に芯を作る意味でも、はやく所帯を持たなきゃな…ということを考えた本でした。生きる意味、大事。

 

「若者」をやめて、「大人」を始める 「成熟困難時代」をどう生きるか?

「若者」をやめて、「大人」を始める 「成熟困難時代」をどう生きるか?

  • 作者:熊代亨
  • 発売日: 2018/02/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)