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ロビン・ウィリアムズ『ノンデザイナーズ・デザインブック(第4版)』

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ロビン・ウィリアムズの『ノンデザイナーズ・デザインブック(第4版)』を読んだ。

 本書を読むきっかけは、デザインの基本を学べる本としてネット上のどこかで紹介されていたのを見たからだった気がする。自分は仕事上でデザインをメインにすることはないけど、見やすい資料やプレゼンテーションを作る上で本書を読んでおくべきみたいな感じで紹介されていた(と思う)ため、いつか一読してみたいとは思っていた。私自身、結構フォントなどに興味を持っていて、文書作成の際などにどのようなフォント使うと読みやすいかとか、どうやって文書を揃えるかなどを気になっていたので、そのあたりを一度学んでみたいという気持ちもあった。

 

タイトルの通り、本書はデザインを専門に学んでいない人向けにデザインする上での基本原則を教えてくれる。豊富なデザイン例などが記載されているため、基本原則がどれほど大きな影響を持つのかを理解しやすい。翻訳本のため、基本的には英字でのデザインを前提としているが、日本語版の補足として日本語によるデザインサンプルなどもあるため、理解が深まりやすい。

本書で紹介されているデザイン原則を知ると、いろいろな資料やチラシのデザインを見る際に、これまでとは変わった見方ができるようになると思う。知識は世界を広げるということだなと思った。

 

近接、整列、反復、コントラストという重要な原則の存在、カラーデザインの基本知識、フォントの分類など、新たに知ることが多かった。特に、カラーの組み合わせの原則や、フォントの分類などは、これまでぼんやりしていた部分が明確になって良かったように思う。本書で知った内容を日常でも意識し、いずれは無意識に行えるようにしていくことが必要だと感じた。デザインの初歩的知識ぐらいは知っておきたいという人は一読してみたらとよいと思う。

 

近接の原則

近接の原則とは、関連する項目をまとめてグループ化するということ。関連しない情報同士は近づけてはいけない。視線の流れを意識すること。 近接は情報伝達の速度を飛躍的に向上させる。

近接は、項目に関係があることを意味する

項目ごとの間に少し空きを入れて視覚的にグループ分けするというのは既にやっているはずだが、それをもっと意識的に力強くやるべき。

4つの基本原則のうち、まずは近接の原則を適用するべき。適切な空間配置の実現なしには、他のどの原則も意味をなさない。

要素間に均等の空白を作らない。見出し、小見出し、キャプション、画像などが、本文のどの部分に関連するかを、読者が一瞬でも迷わないようにする。要素間の関連を近接によって作り出す。 要素一つ一つの意味を把握して、それらを近づけるのか、遠ざけるのかを判断しながら、丁寧に情報の塊をデザインする。

要素間の区別の方法は、字の大きさ、太さ、色、斜体、行間、段落間、インデント、フォントなど。

 

整列の原則

整列の原則は、ページ上のすべてのものを意識的に配置しなければならないということ。ページ上のすべての項目が、何か他のものと視覚的に関連していなければならない。整列は、 デザインに信頼感を与える。

中央揃えは少し弱く見えることがある。右揃えか左揃えにすれば、テキストを結びつける透明な線が、はるかに強くなる。

中央揃えは初心者に最も一般的に使われる整列方法で、フォーマル、静か、普通という印象を与えるが、ただ単に退屈に見えることもよくある。

中央揃えを絶対に使ってはいけないというわけではない。ただし、中央揃えが持つ効果に意識的になって使うべき。

中央揃えに少々ひねりを加える方法としては、中央揃えにした活字ブロック自体を中央からズラしたり、ブロックを上部に集めたり、非常にカジュアルな書体を使うなど。

文字揃えに慣れるまでは、ページ上の文字揃えを一種類のみにすると良い。

あたりを見回して、どのような原則が有効かをそうでないかを言葉にするほど、様々なコンセプトを吸収していける。良いデザインとその良さの原因を吸収すればするほど、自分自身の仕事に戻ってくる。

 

反復の原則

反復の原則は、デザイン上のなにかの特徴を作品全体をとおして繰り返すということ。

反復は「一貫性」とも考えられる。暗黙のルールを読者に伝え、情報を読み取る際の予測をしやすくする。しかし、ただ単に一貫しているという状態を超えるものであり、それは、デザインのすべてを一体化しようとする、意識的な努力を指している。

反復により、ページが視覚的にもっと面白くなるだけでなく、視覚的な組織構造と一貫性がより明白になり強化される。

見出しや小見出しのような一貫した要素を取り上げて、それをもっと強調すること。

反復要素は画像やクリップアートである必要はない。空き、罫線、フォント、整列方法など、意識的に繰り返せるものならなんでもよい。

すでに実践している一貫性を、もう一歩進めること。例えば、1ポイントの罫線を見出しとページ底に引いてるなら、それを4ポイントにして反復要素をさらに強調するなどドラマチックにし、意識的なグラフィック・デザインの一部に変えてみる。

次には、ただ反復を作り出すためだけに、要素を加えてみる。例えば、番号付きリストの数字をもっと目立つ書体や白抜きにして、他のリストも同様にしてみる。

反復は服装にアクセントをつけることと似ている。

 

コントラストの原則

コントラストの原則は、読者の目をページに引き込むために、様々な要素にコントラストをつけるということ(変化量の落差をつける)。2つの項目が正確に同じでないなら、本当に異ならせるのだ。コントラストには2つの基本的な目的がある。1つは、ページに面白みを作り出すということ。もう1つは、情報の組み立てを読者が一瞬でわかるようにすることを手伝うということ。

コントラストは、大きな活字と小さな活字、オールドスタイル書体とサンセリフ書体、細い線と太い線、寒色と暖色、なめらかなテクスチャーと粗いテクスチャー、水平の要素(長い行など)と垂直の要素(行幅の狭い段など)、ゆったりした行間と狭い行間、小さな画像と大きな画像、などで付けられる。

コントラストを付けるときは臆病になってはいけない。2つの要素が異なっているように見えて本当には異なっていない場合は、「コントラスト」ではなく「衝突」が起こる。コントラストでは、本気になること。

コントラストは4つの原則の中で一番ドラマチックである。少しのシンプルな変更が、平凡なデザインと強力なデザインの違いを作り出す。つまり、「見返りが多い」。

 

デザインする際の大まかな手順

読者に真っ先に見てもらいたいものをまず決め、強いコントラストを付けて焦点を作る (コントラスト)

情報を論理的なグループにまとめ、グループごとに近づけたり離したりする(近接)

活字や画像を配置する際に整列を作り出して、それを維持する(整列)

反復できそうな要素を見つける(反復)

 

カラーを使ったデザイン

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補色

カラー・ホイールで真向かいの位置にある色同士のこと。全く反対の色同士なのでどちらかをメインにしてもう一方をアクセントにした場合に最大の効果を発揮することがある。

トライアド(triad)

等しい距離にある3つの色の組み合わせは、心地良い関係を作る。原色(赤黃青)以外の組み合わせはセコンダリー・トライアドと呼ばれ、うまく調和する組み合わせになる。

スプリット・コンプリメント・トライアド

ホイールのどれか1色を選び、その補色を見つける。そして補色の両隣の色と組み合せる。さらに少し洗練された鋭さを持つ組み合わせが生まれる。

類似色

ホイール上で隣り合う色のこと。共通する色を基調に持っているので、調和の取れた組み合わせになる。

ヒュー(hue)

白や黒を加えていない純粋な色のこと

シェード(shade)

ヒューに黒を加えた色(暗くなった色)

チント(tint)

ヒューに白を加えた色(明るくなった色)

トーン

ある色のヒューの濃淡の特定の質を示す。 よく似たトーンを持つヒューを使う場合は、それらをくっつけないように、また、量を等しくしないようにする。

 

寒色は背景に「引っ込む」、暖色は前面に「出る」。 暖色でインパクトをつけるにはごく少量で済む。暖色と寒色を組み合わせるときは一般的に暖色の方を少なめにする。 様々な色に等しい重みを持たせないようにすること。

 

タイポグラフィの基本と活字

下線は使うべきではない。 強調のためにのもっとプロらしい選択は下線の他にも幾つも存在する。 太字体、大きな活字、別のフォント、色、あるいはそれらの組み合わせを試すべき。 テキストを文章の他の部分から離して配置するだけでも良い。 下線を絶対に使ってはならないわけではないが、デフォルトの下線スタイルで済ませてはいけない。

全く同じでも全く違うわけでもない、「類似」した書体を同一ページで複数使った場合に、そのデザインは衝突を起こす( 間違えてそうなったように見えてしまう)。

活字でコントラストをつける方法は、サイズ、太さ、構造、フォーム、方向、色がある。 コントラストをつける時は「臆病になるな」。

 

オールドスタイル(old style)

手書き文字に基づいて、必ずセリフがあり、文字の線の曲線部分には穏やかな太さの推移がある。人に実際に読んでもらいたい大量の活字を組むときはオールドスタイルの書体から選ぶ。和文明朝体はオールドスタイルと同じような使われ方をする。

モダン(modern)

セリフはあるが傾斜せずに水平になっている。 文字の線の太さの推移は極端であり、コントラストを持っている。 モダン書体は人をはっと驚かせる姿をしている。 太さの推移が極端なせいで、長大な本文には向いていない。

スラブセリフ(slab serif)

モダン書体を全体的に太くし、太さの推移をほとんど無くしたもの。 可読性の面では大変優れている。 しかしオールドスタイルの書体に比べると、全体的に暗いページになる。 すっきりと単純な姿をしているので子供向けの本でよく使われる。

 サンセリフ(sans serif)

「サン」(sans)というのはフランス語で「〜ない」という意味。つまり、セリフがない。ほとんどが「モノウェイト」(monoweight:太さが一定)になっている。和文のゴシック体はサンセリフと同じような使われ方をする。

スクリプト(script)

続け字や手書き文字のような書体。 スクリプト書体はチーズケーキのようなもの。 控えめに使わないと気持ち悪くなるため、 長文には絶対に使うべきではない。 しかしスクリプト書体を非常に大きなサイズで使うと、衝撃的な効果を発揮する。 臆病にならないこと。

デコラティブ(decorative)

少し吐き気を催すようなフォントは、大抵デコラティブの項目に分類できる。 楽しくて、目立って、使いやすく、非常に目立つというまさにその理由のために、使えるケースが限られる。

 

活字によるコントラスト

サイズ

サイズのコントラストは非常にわかりやすい。 しかしサイズのコントラストを効果的にするには臆病ではいけない。 はっきりとコントラストを付け、間違ってそうなったと思われるようではいけない。

太さ

レギュラーとセミ・ボールドでコントラストを付けようとしてはダメで、もっと太いボールドを使うべき。 ウエイトのコントラストは、何かを再デザインせずにページに視覚的な面白さを加えるのに、最も簡単で効果的な方法の一つ。

文字ばかりの灰色のページを作ることになったら、読者をページに引き込むために、重要な語句を強いボールド体にしてみること。

構造

同一カテゴリーの2つの書体を、同一ページ上に置くべきではない。つまり、2種類のセリフ書体の一方がオールドスタイルなら、もう一方がモダンかスラブセリフである場合、2種類のセリフ書体を同一ページで使うことができる。同一ページ上で2種類のオールドスタイルの書体を使うのは避けるべき。

文字の構造でコントラストを作る簡単な方法としては、セリフ書体を一つとサンセリフ書体を一つ選ぶこと。 しかし構造のコントラストだけでは力強さに欠けるため、サイズやウエイトなど他のコントラストと組み合わせて違いを強調することが必要。

フォーム

文字のフォームというのは文字の外形のこと。 大文字対小文字も、活字にコントラストをつける方法のひとつになる。

もう一つ分かりやすいフォームのコントラストは、ローマン体とイタリック体の対比。しかし、 2種類のイタリック体や、2種類のスクリプト体や、イタリック体とスクリプト体を組み合わせで使ってはいけない。類似性が多すぎる。

方向

方向とは、活字を傾けること。しかし、 活字を傾けることでその作品の美しさや情報伝達が強化されることを、はっきりと言葉で説明できる場合に限ってそうするべき。

活字の行は水平の方向を持っており、活字の細長い段は垂直の方向を持っている。 こういった、より高度な活字の方向付けでコントラストをつけるのは面白い。 例えば、見開きの2ページを横切る太い見出しと、数多くの細長い段組みでできた本文など。

赤やオレンジなどの暖色は前に出てきて、私たちの注意を引き付ける。 そのためごくわずそのためごくわずかな赤だけでコントラストをつけることができる。 反対に青や緑などの寒色は私たちの目から遠ざかるため、寒色は広い範囲に使っても大丈夫。

 

その他

デザインには、そして人生にも、全般的に通用する指針は、「臆病になるな」ということ。

空白ができることを恐れてはいけない。言葉を、極端に大きくしたり、小さくするのを恐れてはいけない。視覚的表現を、極めて大胆にしたり最小限にすることを恐れてはいけない。

プロのデザイナーは常に他人のアイディアを「盗んで」いる。つまり彼らは、常にインスピレーションを求めて、あたりを見回している。

チラシを作るなら、本当に気に入るチラシやテンプレートを見つけて、そのレイアウトを使うこと。そしてそれを応用することで変化し、自分自身のデザインになっていく。

 

日本語は縦にも横にも読み進めることができるため 、行間をアルファベットでデザインした場合と同程度の設定にしてしまうと、とても窮屈で読みづらい 。日本語での行間はアルファベットの1.2倍程度に設定する。

 

ノンデザイナーズ・デザインブック [第4版]

ノンデザイナーズ・デザインブック [第4版]