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自炊力 料理以前の食生活改善スキル(白央篤司)

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フードライターである白央篤司さんの「自炊力 料理以前の食生活改善スキル」を読みました。

白央さんは30歳でフリーのライターになられて以来、健康と経済性を意識した食生活を送るようになり、自炊を本格的に始められたとのこと。そんな著者が、"忙しいけど自炊をやってみたい"と思っているような人に向けて書かれたのがこの本です。料理好きな人への本ではなく、料理に対してさほど興味もないけれど、自炊して健康的かつ経済的な食事をしたいと思っている人にちょっとしたヒントを与えるような本でもあります。


自分がこの本に興味を持ったのはインターネット上のどこかでオススメされていたのを見たからだったと思います。普段、自分は料理をするということがほとんどなく、主には外食やスーパーのお惣菜やお弁当、または買い置きの冷凍食品で食事を済ますことがほとんどです。学生時代はお金にも余裕がなかったので、外食はほとんどせずに自炊がメインでしたが、今は少しお金がかかっても食事の準備に時間を掛けたくないという気持ちがあるので、料理はほとんどしていません。また、キッチンの掃除とか億劫であるということも料理から遠ざかっている理由の一つです。さらに、自分で料理したものよりも外食や買ってきたものを食べる方が満足度が高いという気になってしまったということもあります。ネット上のレシピを参考に自分で料理するものは決して不味くはないのですが特段美味しくもない(ちなみに自分はレシピを忠実に守る人間です)。その場合に、料理した手間などを考えたりすると、多少お金を出して食事の満足度を上げた方が幸せなんじゃないかなぁという考えに達したのです。まぁ多分ですが、"誰かのために作る"っていうようなモチベーションがあれば、また料理に対する気持ちも変わってくると思うんですけどね。


そんなことで料理から離れている自分ですが、健康的かつ経済的な食事ができればなぁという気持ちはあるわけです。外食やお惣菜、冷凍食品とかではおそらく栄養が偏りがちになっているし、なるべく食事にかけるお金を減らせるならそれに越したことはないわけです。そうした考えから、普段料理をしない人間向けの自炊本である本書に興味が湧き、なにか自分の食生活を改善できるヒントが得られればいいなという軽い気持ちで読もうと思いました。


本書で実践したいと思ったことの一つに、まず「買う力」を身に付けるということがあります。スーパーやコンビニで食事を買って済ませるという場合でも、買ったものが「主食(ごはん・パン等)、主菜(肉・魚・大豆等)、副菜(野菜・フルーツ等」のどれに当てはまるのか考え、なるべくバランスよく買うようにするべきということです。つまりは栄養の偏りへの意識を高めるということですね。


また、水気をしっかり切ることが料理においてはかなり重要ということも書かれていました。料理してた頃には水気を切ることをそこまで真剣に考えていなかったので、今後料理をする際には覚えておきたいことの一つです。


「パッケージの注意書きをよく読む」ということも出てきました。確かにこれまで保存方法などの注意書きをしっかりと確認することはしていませんでしたので、今後はしっかりと確認し、食品や調味料をベストな状態で使用するということを改めてやっていきたいです。


おもしろいと思ったのが、料理を勉強していく過程で重要なこととしてファンになれる料理家を見つけることが挙げられています。興味を持った料理家がいれば、その人の真似をしたいというモチベーションからスキルが向上していくということです。確かに興味を持ってファンになった人から受ける影響って大きいものですよね。現時点で自分は土井善晴さんに少し興味が湧いています。なぜかというと、土井さんが一汁一菜という考え方を紹介されているのをネット上のどこかで見て、おもしろそうだなと思ったからです。ちなみに本書の中でも土井さんの話題は出てきます。


自炊初心者が覚えておくべき料理として、味噌汁やコンソメスープなどが紹介されています。なぜかというと、これらの汁物は余り食材を消費しやすいから。とりあえず煮て、味噌なりコンソメなりを入れておけば一食として成り立ちやすいのです。余り物をスープにするというのはテクニックとしてよく聞くことなので、自炊する際には是非覚えておきたいことです。汁物やスープ物のレシピ本を買っても良いかもしれません。


新たに知ったこととしては、日本人は総じて塩分を摂りすぎているという事実がありました。WHOの推奨値の約2倍の約10gを一日に摂っているようです。減塩はいろんなサプリメントを摂取することよりも効果が大きいとのことです。


また、食物繊維はなるべく主食で摂取すべきという考えも初めて知りました。野菜で食物繊維は摂れますが、たくさん摂ろうと野菜おかずを食べると塩分も過多になりやすいため、主食に混ぜて簡単に摂ろうという考え方です。主食で摂る場合、商品にも依りますがグラノーラ系がオススメとのことでした。これを知ってから、自分は朝食にはカルビーのフルグラに飲むヨーグルトをかけて食べるようにしています。カルビーのフルグラは50gで食物繊維が約4.5gなので、一日に必要な食物繊維20gの約1/5程度が朝食で摂れることになります。以前はバナナ一本を朝食としていたので朝食にかけるコストは上がってしまいましたが、しかし朝食はもっとしっかりしたものを食べるべきと思っていたので、多少コストが掛かってもそれに見合う価値はあるんじゃないかと思っています。


本書には、こんな食材でこんな料理を作っていますというような内容や写真はありますが、レシピ本ではなく、自炊したいなーと考えている料理スキルの低い人向けに、自炊を現在の生活に取り入れていくうえでの考え方やちょっとしたコツを教えてくれるものです。自炊とか料理への心理的なハードルを下げてくれる良書だと思いました。自炊や料理したいけどできていない、でもちゃんと自炊できるような生活に憧れているような人(自分もそんな感じです)にとっての導入として本書はちょうどいいんじゃないかと思います。

  • 自炊力というと「とにかく調理を!」と思うが、調理できない状況にある人はまず「買う力」からつけていくべき。漫然と食べたいものを買う状態から、自分の買ったものが「主食、主菜、副菜」のうち、どれに構成されるかを考えられればかなりの前進。
  • 水気を切るのを甘く見るのは厳禁。水気を切るのはおいしく調理する上でかなり大事なポイント。「このぐらい大丈夫」と思うような水分でも和え物やサラダでは致命的なミスになりうる。
  • 冷凍野菜は全般的に汁物やソース多めの料理にちょい足しするのには向いている。
  • 食材、食品、調味料などはなんにせよ「パッケージの注意書きをよく読む」を基本にするべき。それらには開発したプロの注意点とアドバイスが端的に書かれている。
  • 平成28年の「国民健康・栄養調査」によると、日本人の食塩摂取量の平均値は9.9グラム。WHOによる成人の塩分目標数値は一日あたり5グラム。つまり日本人は総じて塩分を摂りすぎている傾向にある。
  • 「料理ができるようになりたい」よりも、自分はどんな料理が作りたいのかを最初に具体的に考えておくことが、自炊力を身につける上で大事。
  • 結局人間は興味のない人に指導されても頭に入ってこない。ファンになれる料理家を見つけたことで、結果的に技術を早く身に着けたビギナーはとても多い。
  • 切り方一つで料理は本当に味が変わってしまう。なぜなら切り方は加熱の時間とダイレクトに関わってくるから。切り方はくれぐれもおろそかにせず、指示どおりを心がけるべき。
  • 自炊力を上げるには、作ってみたい料理にチャレンジする(自分の希望を具現化)→余った食材を使い切る(現実問題の処理)、これを繰り返していかなければならない。
  • 何か余ったら、まず味噌汁に入れれば大体片付く。
  • 栄養バランスを良くする上でおすすめのフルーツはキウイ。
  • 食物繊維を意識的に増やそうとする場合、簡単なやり方であれば朝食にシリアルを活用できれば繊維量はかなり上がる。コーンフレークよりもフルーツグラノーラのほうが食物繊維が摂れる。またはお米に混ぜるという方法もある。麦や雑穀、なんでもいいので食物繊維の多い食材を主食に足す。パンであれば全粒粉食パンやライ麦パンを選ぶようにする。
  • 野菜のおかずで食物繊維の量を増やそうとすれば塩分も一緒に増える。主食に穀類を混ぜて繊維量を増やすほうが簡単だし、結果的に塩分の摂りすぎも抑えられる。野菜だけでは食物繊維を充分に摂れない。
  • 減塩はお金がかからない上に、どんなサプリよりも効果が期待できる。
  • 栄養面で大事にするべきことはまず、欠食しないこと。一食抜いてしまうと充分な栄養量が摂りにくくなる。たとえおにぎり一個でもいいから何か口にするべき。
  • 料理し始めは小難しい料理ではなく、まずは「切る・加熱・和える」の3工程でできるような料理がおすすめ。例えば豚しゃぶサラダのようなもの。コツは沸騰したお湯に肉を入れると固くなるので、少し水を入れてから肉を入れるようにする。
  • キノコ類は冷凍できる(石づきをとってから)。その他にも冷凍庫に常備しているものは、油揚げ、練り物類(かまぼこ、ちくわ、なると、カニカマなど)、ソーセージ、ハム、ベーコン、トマト、パン

自炊力 料理以前の食生活改善スキル (光文社新書)

自炊力 料理以前の食生活改善スキル (光文社新書)