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佐々木圭一『伝え方が9割』

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コピーライターや作詞家として活躍されている佐々木圭一さんの『伝え方が9割』を読みました。本書は2013年に刊行され、ベストセラーになった本です。

 

自分が今回読もうと思ったきっかけは、いつもの通りネットのどこかで勧められているのを見たことや、有名な本なので一度読んでおこうと思ったからです。私自身、自分の短所としてコミュニケーション能力の低さがあると思っていて、なにかしらそれを克服できるようなヒントを求めてコミュニケーション関係について書かれた本を読むことが多いです。今回もその一つですね。しかし本書のような本がベストセラーになるってことは、やはり多くの人がコミュニケーションについて関心を持っていて、苦手に思っている人も多いということかもしれません。

 

著者の佐々木圭一さんは大学で機械工学専攻だったようですが、コミュニケーションに関するコンプレックスを打破してもっと思いを上手に伝えらるようになることを目指し、広告代理店に入社されたとのこと。しかし、入社してコピーライターになってから仕事はうまくいかず、ストレスによる過食で1年に10キロも太る有様だったようです。そんな状況を打破するために、感動的な言葉や名作コピー集を集めて書き写したりなどの試行錯誤をされ、そこから感動的な言葉には「作り方」があると気づき、それ以来、素晴らしいキャッチコピーや言葉を生み出せるようになったとのこと。本書では佐々木さんがこれまでに習得した言葉の作り方や伝え方のノウハウを知ることができます。

 

本書は大きく分けて「ノーをイエスに変える技術」と、「強いコトバを作る技術」の2パートに分かれています。

 

「ノーをイエスに変える技術」の基本は、自分のお願いをそのまま伝えるのではなく、相手の気持ちや考えを予想し、自分のお願いが相手にもメリットのあることであると思わせるテクニックであるといえると思います。相手を動かす切り口として7種類が紹介されており、こういう伝え方なら自分がお願いされても聞きやすくなるよな、と思わせられるテクニックでした。「選択の自由」や「認められたい欲」などによるお願いなんかは上手いなぁと感じました。何かを人にお願いしたり認めてもらうようなシチュエーションは日々ありますので、本書の技術を頭に置き、何かお願いするときは頭の中のお願いをそのまま出すのではなく、一旦考えてみるということを意識してみようと思います。

 

「強いコトバを作る技術」では、人の感情を動かすような言葉がどういう仕組みで出来上がってるかが解説されています。仕組みを知ると、"いいな"って思える言葉や印象に残る言葉には本書で紹介されているテクニックが使われていることがわかります。しかも、本書で紹介されている5種類のテクニックはそれほど難しいものでもないように思われます。ちょっとした工夫で、言葉の持つ印象って変わるということですね。まぁ難しくなくてもそのテクニックを見つけられるってやっぱりすごいと思います(コロンブスの卵的な)。テクニックの中でも「ギャップ法」なんかは、シンプルですけどかなり効果的で印象に残る言葉が生まれますね。あのオバマ前大統領のスピーチでも使われていたようです(「これは私の勝利ではない。あなたの勝利だ。」)。

 

そのほかに、メールは感情30%増でちょうどいい、ということも言われています。確かにデジタル文字って感情が伝わりにくいです。そのため、著者はメールの語尾などに「!」を付けるなどのサプライズ法や、その他のテクニックを使って感情を乗せているとのこと。語尾に「!」を付けるのは前から自分もよくやってますね。やっぱり「!」を付けると、無い時よりも生き生きした文面に見えるんです。本書での紹介をみて「やっぱり印象変わるよな」と再確認できたような気になりました。

 

本書では、伝え方や言葉の作り方に関するノウハウが詰まっています。特に「ノーをイエスに変える技術」は普段から頻繁に使う機会にあるテクニックであり、これを知っているのと知らないのでは相手に印象が大きく変わってくるように思います。良好な人間関係を保つためにもこういうテクニックは知っておくべきことですね。本書のテクニックだけでなく、自分で感動した言葉や印象に残った言葉を集めて著者がしたようになにかしら共通項を探せば、新たなテクニックが発見できるかもしれません。本書はコミュニケーションや言葉の仕組みを分解して教えてもらえたような、そんな本のように感じました。サクッと読めますし、ベストセラーだけあって読んでおいて損はない本だと思います。本書は続編も刊行されていることから、そちらも今後読んでみたいと思います。

 

  • 「ノー」を「イエス」に変える3つのステップ
    ①頭で思ったことをそのまま口のするのはやめる
    ②お願いに相手がどう考えるか、普段相手は何を考えているか、相手の頭の中を想像する。
    ③相手のメリットと一致するお願いを作る。
  • はじめは特にこの3つのステップを一段階ずつ意識すること。一度に答えを出してしまおうとする精度が上がらない。そのうち意識しないでも自然にできるようになる。
  • 相手の心が動くものを探す際の7つの切り口
    ①相手の好きなこと
     あなたの求めることよりも相手の好きなことから作ることにより相手のメリットに変える。「デートしてください」→「驚くほど旨いパスタどう?」
    ②嫌いなこと回避
     「こちら嫌いでしょ、だからやらない選択をしましょう」という切り口
    「芝生に入らないで」→「芝生に入ると農薬の臭いが付きます」
    ③選択の自由
     たとえお願いが相手にメリットのあるものであっても「イエス」と云わないぐらい決断するときに人は慎重。人は決断が得意ではない。一方で比較は得意。比較すること自体では決断ではないが、「こちらがいい」と言ってしまうと頭の中でそれを決断したかのように錯覚してしまう。
    「この案どうですか?」→「A案とB案がありますが、どちらがいいですか?」
    ④認められたい欲
     人間のDNAには「認められたい欲」が組み込まれていて、それを満たすためにちょっとくらい面倒なことでもやろうと思うもの。
    「残業お願いできる?」 →「君の企画書が刺さるんだよ。お願いできない?」
    認めている言葉から始まっていることで、面倒くさいこともやってみようという気持ちが生まれる。
    ⑤あなた限定
     人は「あなた限定」に弱い。
    自治会のミーティングに来てください」→「他の人が来なくても、齋藤さんだけは来てほしいんです」
    その人の名前を使い、「私こそが必要と思ってくれている」と思わせ、心を満たすことで相手のメリットに変える。名前を呼ばれることで、あなたのことをちょっと身近に感じる。
    ⑥チームワーク化
     お願いを相手任せにせず、「一緒にやりましょう」とあなたと相手をチームワーク化する。ひとりだと赤信号を渡りたくなくても、「一緒に渡りましょう」と言われると、人は動くもの。「勉強しなさい」→「一緒に勉強しよう」
    ⑦感謝
     最終手段にして最大の方法。
    「ありがとう」と感謝を伝えられると、ノーとは言いにくい。自分を認めてくれる人のことを「サポートしたい」という意識が生まれる。
    「領収書をおとしてください」→「いつもありがとうございます。領収書お願いできますか」
    「トイレをキレイに使ってください」→「トイレをキレイに使っていただき、ありがとうございます」
  • 「お願い」は、あなたの言葉ではなく、あなたと相手の共作である。あなたのハッピーと相手のハッピーを一緒に作り上げること(Win-Winを作り出すこと)
  • ふせんマジック
     ふせんは使い方次第で言葉をさらに輝かせるツールになる。ふせんを「立てる」「やぶる」「隠す」などすることで資料に注目してもらえたり、相手に好印象を与えられる。なぜなら、「ひと工夫する」ということは「あなたが好きです」と伝えていることだから。 

  • 強い言葉を作るのに必要な「コトバエネルギー=心を動かすエネルギー」をどう生み出すか?その方法はジェットコースターの原理と同じ。言葉に高低差をつけてあげればエネルギーは生まれる。
    ①サプライズ法
     サプライズがあると人は興味を持ち、注目するもの。サプライズ法は強い言葉を作る基本中の基本
    1)伝えたい言葉を決める
    2)適したサプライズワードを入れる
    「(語尾に)!」「びっくり、〜」「そうだ、〜」「ほら、〜」「実は、〜」「あ、〜」
    「あ、小林製薬」等
    ②ギャップ法
    1)最も伝えたい言葉を決める
    2)伝えたい言葉の正反対のワードを考え、前半に入れる
    3)前半と後半がつながるよう、自由に言葉を埋める
    「誰もが敵になっても私は味方です」
    「他の店がまずく感じるほどここのラーメンは旨い」
    ③赤裸々法
     人間としてそれが当たり前だから、今まで言葉にしてこなかったものを、あえて赤裸々に言葉にする。
    1)最も伝えたい言葉を決める。
    2)自分のカラダの反応を赤裸々に言葉にする
    3)赤裸々ワードを伝えたい言葉の前に入れる
    「唇が震えてる。あなたが好き。」
    「顔が真っ赤、〜」「のどがカラカラ、〜」「唇が震えてる、〜」「息ができない、〜」「目が合わせられない、〜」「すべてのうぶ毛が立っている、〜」「汗ばんでいる、〜」「頭の中が真っ白、〜」「手にじんわり汗が、〜」「指先がじんじんする、〜」「自分の鼓動がわかる、〜」
    ④リピート法 
     記憶に残すことと、感情を乗せること。その2つを併せ持つことができるのがリピート法。数々の童謡や名曲もリピート法で作られている。
    「さいた さいた チューリップのはなが〜」「まいにち まいにち ぼくらはてっぱんの〜」「LOVE LOVE 愛を叫ぼう 愛を呼ぼう〜」
    言葉をリピートすると心からそう思っているように伝わり、強く印象的に伝わる。
    1)伝えたい言葉を決める。
    2)くり返す。
    「今日は暑い、暑い」
    ⑤クライマックス法
     伝えたいと思っている相手に「これから重要な話が始まるんだ、聞いておかなくては!」と思わせて集中力をこちらに向かせる技術。
    1)いきなり「伝えたい話」をしない。
    2)クライマックスワードから始める。
     「これだけは覚えてほしいのですが、〜」「ここだけの話ですが、〜」「他では話さないのですが、〜」「誰にも言わないでくださいね、〜」「これだけは忘れないでください、〜」「一言だけ付け加えますと、〜」「ワンポイントアドバイスですが、〜」「3つのコツがあります、1つ目が〜」
  • 簡単に「強い長文」を作る技術
    1)読んでくれる可能性の高い出だしの1文は、「強い言葉」を使った短い言葉にする。「ボランティアしたい方へ」→「そうだ、ボランティアしたい。と思った方へ。」
    2)読後感を良くする「フィニッシュ」を作る。出だしで使ったのと同じ「強い言葉」を最後にも使う。アレンジしても良い。
    「ご応募お待ちしております」→「そうだ、ボランティアしたい。その気持ちを、ご応募へ。」
    3)飛ばされないタイトルを作る
    出だしが良くできていたらそのままタイトル、もしくは「サプライズワード」+「出だしの重要ワード」
    「そうだ、ボランティアしたい。と思った方へ」→「ボランティア!」
  • メールは感情30%増量でちょうどいい
    あなたのメールはあなたが思っている以上に相手に冷たく伝わっている(デジタル文字は冷たいもの)。感情が殺ぎ落とされる分、言葉で感情を30%増しにする。
    具体的には語尾に感情を加える。「!」を加えるだけでも感情が乗って相手の印象に残りやすくなる。

参考文献

 

伝え方が9割

伝え方が9割