死んでないだけの日常

日々の生活とか出会ったもの

没頭力 「なんかつまらない」を解決する技術(吉田尚記)

f:id:nona-jackson:20190630230636p:plain

ニッポン放送のアナウンサーである吉田尚記さんの『没頭力 「なんかつまらない」を解決する技術』を読みました。ちょっと前に読んだ本ですが、内容や感想などをここに残しておきたいと思います。


読むことになったきっかけは、吉田さんの前著『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』を読み、内容が面白かったので本書にも興味が湧いたのでした。前著と同様に本書もツイキャスニコニコ生放送で視聴者相手に吉田さんが語った内容が元になっており、そのため内容は放送やラジオを聞いているような雰囲気となっていて読みやすいです。


世の中に「不満はないけどなんかつまらない」が溢れている一方、吉田さんは毎日楽しめていると自負のある方で、楽しめている=没頭できている時間が多いという考えから、意識的に没頭に入れるようにするコツの紹介が本書の目指すところとなっています。


没頭するということは、プロスポーツ選手やエクストリームスポーツを行う人などがハイパフォーマンスを得るために必須としていることです。しかし、吉田さんのスタンスとしては、ハイパフォーマンスを目的に没頭をするのではなく、ただ単に楽しむために没頭しよう、没頭の対象はなんでも構わない、日常を様々な没頭で埋めて人生を楽しんでいこう、というようなものです。


本書で引用されているポジティブ心理学では、幸福というものを、快楽・意味・没頭、という3種類に分けています。つまり、没頭状態というのは幸福の一側面だということですね。没頭=幸せという考えは自分の中これまでなかったですが、確かに没頭して何かに夢中になっている時って後から思い返すと楽しかったとか頑張ったなとか思うことがあります(没頭している最中はあまり何も考えていないことが多いですが)。


また、没頭することの強みは、誰にもそれを奪えないということと紹介されています。本書でも出てきますが、例え刑務所の中でも作業に没頭して楽しむことは可能です。これは没頭することの最大の強みであり、つまりは考え方次第でいろんな状況を楽しめるものに変えられるということでもあると思います。なんだか勇気づけられるような考え方と思いました。


没頭する環境の準備として、ゴールを明確にする、フィードバックが早い(結果がすぐにわかる)、自分の能力の4%難しいことに挑戦する、といったことが挙げられています。「ちょい難」に難易度を設定すると良いというのは、精神科医の樺沢さんの本で紹介されていました。これらの条件はゲームとかではしっかりと考えられているため、だからゲームには熱中しやすいのでしょう。


没頭する際の3ステップは、不安→開き直り→没頭、となっていると紹介されています。不安(ストレス)がある状態から、「やろう!」「やるしかない」と開き直る(リラックス)ことにより没頭に入ることができるようです。開き直りは自分の行動なので、受け身ではなくなにかしら自ら行動することが没頭への鍵ということです。本書ででも紹介されていますが、「やらなきゃ死ぬ」というのは確かに最高の開き直りポイントですね。


没頭しやすいのは、体を動かすこと、例えばゲーム、プログラミング、楽器演奏、掃除、料理などがあるようです。また、不可能そうな挑戦をできそうな挑戦に変えるということも重要といわれています。本書の例では、織田信長から「天下をとれ」と言われてもどうしたらいいか途方にくれますが、「斎藤家をなんとかしろ」だとなんだかやることが見え始めるとして紹介されています。タスクの細分化ということですが、自分はこの部分は非常に勉強になったような気がします。確かに大きすぎる目標とか漠然としたゴールを作っても、それが大きければ何から手を付けるべきかわからずに途方に暮れるばかりです。ちゃんと「できそうだな」と思える段階にまでタスクを細かくしていくことで、「やってみるか」という気になるのです。なかなか手が付けられず後回しにしがちなことがある場合なんかは、タスクの細分化をしてモチベーションを上げていくことがいいと思われます。


適度な不安(ストレス)をかける方法として、自宅ではなく外で作業を行うことが一つの方法として挙げられています。外で何かをしたほうが捗るというのは経験として理解していましたが、没頭の条件から考えても自宅よりも外のほうが良いようです。取り入れやすい不安(ストレス)として、締め切りを設けることも紹介されています。締め切りがあれば集中力があがるということは精神科医の樺沢さんの本でも出てきていました。没頭する際の条件として締め切りはかなり有効で使いやすそうですね。


本書では没頭すること=幸せという考えからその重要性が紹介されています。没頭が幸せの一要素というのはこれまで思ったことがなかったので、新たに知れて良かったように思います。快楽や意味が得られなくとも、没頭ができれば幸せと感じられることができ、それは快楽などで感じる幸せと同じですからね。幸せと感じるときに出る脳内物質は同じという訳です。上に書いたことの繰り返しにもなりますが、没頭できるコツを知っておけばどんな状況でも楽しめるということです。いい考えですよね。没頭できるコツを生活に取り入れていろんなことを楽しめるようになれば、日々の生活の充実感も上がるのでしょう。なんだかいろんなことへの可能性が広がったような気がする本でした。

  • 人生の究極の目標は”上機嫌”でいること
  • 予防医学的な「幸せ」は「ワクワクして目が覚めて、夜満ち足りて眠る」=「人生を上機嫌で過ごす」ことと同じ
  • 本来最も上げるべきスキルは、自分が楽しく生きるためのスキル(生活を楽しいものと感じられるようにするテクニック)
  • 「没頭」は時間を忘れてしまうくらい強烈な集中状態にあること
  • 「没頭できる対象を見つけろ」ではなく、「没頭というモードを手に入れる」ことが目標。モードになれば対象は何だっていい
  • 行為に意味を求めている人は、行為自体が楽しくてやっている人には絶対に勝てない(最難関の試験に合格する人のほとんどは試験をゲームだと言っている)
  • 「没頭」というモードの最大の強みは、奪われないし、奪えないということ
  • フロー状態(没頭)で「自意識の喪失」を体験した後は自信がつく。「自信をつけよう」と思って行動しても自信なんかつけられなくて、無我夢中でことに臨んだ時だけしか自信なんてつかない
  • 受け身の行動はフロー体験を導かない
  • 没頭しやすくなる条件

没頭するためには自分なりのルールを決める=ゴールを明確にする
やったことが成功か失敗か、一発でわかること=結果が得られるまでのスパンを短くする(クイズと試験の差はこれで、クイズは答えた瞬間に正解か不正解がわかるから非常に没頭しやすい)
自分のスキルより4%難しいことに挑戦するときが一番フローに入りやすい=少し背伸びが必要だけれど絶対にできないとは思わない程度の難易度がよい

  • 不安→開き直り→没頭(フロー)
  • 没頭するためにはこの3ステップが必要。この順番でしか没頭には入れない
  • 自分にとって価値があるものに対しては不安が生まれる。そしてそこに立ち向かわないと没頭は訪れない
  • 「不安は没頭への入り口」と思えば、あとはもう開き直るだけでいい。そう考えれば不安や絶望を飼いならすことができるはず
  • 不安と没頭が自然と訪れるものなのに対して、開き直りは基本的に自分で起こさなければいけないこと
  • 不安からどうやったら開き直れるか。「やらなきゃ死ぬ」という感覚は最高の開き直りポイント
  • 結局、不安から没頭にたどり着くには行動しかない
  • 倉本美津留さん「面白くない人を面白くする方法=人と違ったことを言え」
  • 没頭によって最大限の力を発揮することが必要な分野のプロは、自分なりに「開き直る方法」を身につけている
  • 不安→開き直り→没頭の中で、不安から没頭に移るときの開き直りの手法。その一番簡単な方法が「体を動かす」なのかもしれない。特に両手を動かく行為は没頭しやすい(ゲーム、プログラミング、楽器演奏、掃除、料理など)
  • 楽しいと思ったことを書き出してみる。自分にとって没頭の入り口が見つかるかもしれない
  • まずは手を動かす=行動する
  • 勉強にやる気が出ないときっていうのは、いろんなことが明確じゃない。ゴールが明確だったり、ちょうどいい達成度を設定できていたりすれば、没頭して取り組める
  • 挑戦になっているかどうか確認する
  • 不可能な挑戦をできそうな挑戦に変える

「タスクの細分化」ってすごく重要な能力。大きな目標は小さく分解していけばいい(天下とれ→斎藤家をなんとかしろ)

  • 自分のモチベーションがいつ上がるかモニタリングする
  • 目標を設定するときに考えるべきなのは、「実現できそうだから」ということではなく「自分のモチベーションが上がるのは何か」ということ
  • 適度なストレスをかける

自宅だと落ち着きすぎてストレスがかからないが、喫茶店の場合は外であるという緊張感があり、危険でもないから緊張とリラックスが両方ある。それで開き直って没頭できる

  • 日常に取り入れやすいストレスの一つが「締め切り」。ゴールを明確にするためにもすごくいい方法
  • 人間って、没頭している人以外のパフォーマンスって見たくないもの。一生懸命やっていないアイドルって見ていられない。見る側にとっては、パフォーマーが没頭していること自体がパフォーマンスの価値の一つだったりする